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まい・らびりんす

安楽病棟

「安楽病棟」帚木蓬生著
ある病院の痴呆病棟へ入院している患者たちの入院のいきさつから始まります。
かなりのページを割いてこの場面が続くので読むのがちょっと辛くなります。
そうして痴呆病棟に勤務する一人の看護士の目を通して物語りは進みます。
一筋縄ではいかない痴呆の介護、、小説の中で語られるのは、理想じゃないかなと思います。
よほど高額の費用を払っているならともかく老人病院の実態は悲惨なものだと思いますが表に表れないのは入院させている家族に罪悪感があるからだと思います。

一生懸命介護、看護を続けているうちに元気だった患者が突然亡くなるということが重なる。
疑問を持ち始める看護士。
最後のほうがサスペンスといえばサスペンス。
ある医師が病院にはない薬、個人で取り寄せた薬で、次々と安楽死を図っていることに気づきます。

そうとは知らない家族ですが多分悲しみよりも安堵しているであろうことは明白なので事件にもならずに次々と安楽死は行われてゆく。

理想と現実は程遠いですよね。
家族を識別できなくなって、排泄のコントロールも出来なくなって、徘徊、寝たきり、被害妄想。。

終末期医療に取り組んできた医師の行為に最後は看護士の告発の手紙で終わりますが、それはあらためて論議する為であって医師を非難するためではありません。

「閉鎖病棟」と同じくちょっと重い内容です。
悲惨な場面ばかりではなく、入院していた男女が家族の了解を得て一緒に生活を始めるエピソードもありますが。



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